【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。



随分気を使わせたというか、いろんな心配をかけてしまったみたいで申し訳ない気持ちになった。


「こちらこそすみません。迷惑をかけた上に、お昼休みまで付き合わせてしまって……」

「花京院さんが謝る必要ないですよ!俺が出しゃばっただけなんで、気にしないでください。それに……」


私の方を見て、少し照れくさそうに笑った後藤くん。


「花京院さんのお昼休みをもらえて……嬉しいです」

「え?」


どういう意味ですか?と聞くより先に、


「あの……」



口を開いた後藤くんに、タイミングを失ってしまう。

聞くのをやめて、わたしは耳を傾けた。


「日曜日、どうしますか?勝手にあんなこといいましたけど、那月と約束してたんじゃないですか……?」


どうしてわかったんだろう……と思ったけど、後藤くんは鋭いから、きっとわかった上で助けてくれたんだろう。


「……はい」


なにも否定するところがなく、頷くしかなかった。

約束。その単語に、さっきの那月くんの姿を思い出して悲しくなった。自然と、視線が下がってしまう。


「そんな顔しないでください。花京院さんが悲しそうだと……放っておけません、俺」


優しい声に顔を上げると、わたし以上に悲しそうな後藤くんと目が合った。

後藤くんがそんな顔する必要ないのに、優しいな。


「僕でよければ、話聞かせてもらえませんか?」


こっちがお願いする立場のはずなのに下手に出てくれる後藤くんは、やっぱり良い人だ。後藤くんの包容力を前にすると、自然と悩み事を吐いてしまいそうになる。


「実は……」

「——先輩。こんなところにいたんですね」


……え?

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