【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
話って、一体なんだろう。
なんだか、悲しい予感しかしない。
「それじゃあ、お疲れ様です」
要件のみを言って、去っていく那月くん。
一瞬、『別れ話』という考えが脳裏を過って、それがとても腑に落ちてしまった。
もしかしたら、このまま振られちゃうのかな。それが普通にあり得てしまうと、むしろ納得してしまう自分に悲しさを通り越して無になった。
一人でたくさん悩んで考えて、ちょっと疲れちゃったな……。
別れたくなんてないのに、それを受け入れてしまいそうな自分がいる。結局今も、那月くんの気持ちはわからないまま。
「あの……」
後藤くんが、言いにくそうに口を開いた。なんとなく、聞きたいことはわかる。
どうして那月くんが、あんなに不機嫌かってことだよね……。
「えっと、那月くんが何に怒ってるのか、わからなくて……」
「喧嘩でもしましたか?」
「喧嘩ってわけではないんですけど……」
きっかけがあるとしたら、家で那月くんを拒んだことくらい。