【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
けれど、そんなことを後藤くんに言うのもどうかと思って、言葉を飲み込んだ。
「言いにくいなら、言わなくても大丈夫ですよ!花京院さんが吐き出したくなったら、いつでも頼ってください」
ああ、また気を使わせてしまった。
後藤くんがせっかく、時間を割いてくれたのに。
でも、こんな質問をするのも……。うーんと……。
「あ、あの……」
悩んだ末、わたしは恐る恐る口を開いた。
「会社でこんな話をするのは、どうかと思うんですけど」
「なんでも聞いてください」
保険をかけるように前置きをしたわたしに、後藤くんは優しく微笑みかけてくれる。それに少し、肩の力が抜けた気がした。
……よし。
「やっぱり男性は、その……拒まれたら、怒りますか?」
出来る限り、オブラートに包んで言ったつもりだった。
「……ゴホッ……!……え、え?」
後藤くんは、一瞬ぽかんと口を半開きにさせた後、咳き込み始めた。
「だ、大丈夫ですかっ?」
「は、はい!ちょっと驚いてしまって……!」
そ、そうだよね。やっぱりこんなことを聞くのは変だよねっ……。
「へ、変なことを聞いてしまって、すみません……!」
「い、いえ!那月が怒ってる理由って、そんなことなんですか?」
胸を撫でながら、息を吐いた後藤くんは少し眉を顰めながらわたしの方を見た。
「わからないんですけど、それしか心当たりが無くって……」
「んー、そんなことで怒るやつだとは思わないんですけど……」
難しそうな表情で口角のを下げ、悩むように「うーん」と首を傾げた後藤くん。