【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「でももしそうだとしたら、同じ男としてどうかと思いますね」
少しの沈黙の後、後藤くんはわたしと視線を合わせるように頭を傾げ、そう言ってくれた。
「花京院さんが悩む必要ないと思います。嫌な時は嫌だって言えばいいし、そんなことで相手が怒るなら、相手に非がありますよ」
今日はいつもより一段と涙腺が弱くなっている気がする。
後藤君の微笑みと優しい言葉に、気を抜いたら今にも涙が溢れてしまいそう。
わたしに非があると思っているし、できることなら謝りたいと思っている。
でもその反面、どうして那月くんがそこまで怒るのかもわからなかったから……後藤くんの言葉に救われた。
相談して……よかった。
「私、実は男の人と付き合うのは初めてなんです」
心が軽くなったからか、自然とそんなことまで話してしまった。
「………………え?」
わたしの方を見て、これでもかと目を見開いた後藤くん。
一体どこにそんな驚く箇所があっただろうかと思いながら、話を続けた。
「だから、わからないことばかりで、正直怖くて……那月くんが考えてることも全くわからなくて」
「……ちょ、ちょっと待ってください!」
酷く取り乱した様子の後藤くんに遮られ、首を傾げる。