【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
一体、どこに行くんだろう。
気になったけれど、聞けるような空気でもなく、私はただじっと窓の外を見つめていた。
どこかのお店で話すのかと思ったけれど、那月くんが車を停めたのは見覚えのある場所だった。
ここは……那月くんの家の駐車場。
家で話すのかな?それとも、一旦荷物を置きにとか……?
「どうぞ」
どうするのが正解か悩んでいると、那月くんが扉を開けてくれた。
どうやら、家で話をするつもりらしい。
「あ、ありがとうございます」
私もシートベルトを外し、車から降りる。
いつもより早足で歩く那月くんの後ろを、追いかけるようについて行った。
「入ってください」
玄関の鍵を開け、ドアを開けたままそう言った那月くん。
「は、はい」と返事をして、中に上がらせてもらう。
この前来た時は、すごくドキドキして、那月くんのお家っていうだけでワクワクして……幸せでいっぱいだったのに、
今はなんだか、いろんな意味で緊張のあまり、足が竦みそう。
案内されるままリビングに行き、素っ気ない言い方で「ソファに座っててください」と促された。
那月くんの機嫌をこれ以上損ねないよう、大人しく座る。
一度リビングの奥へ消えた後、飲み物を持って戻ってきた那月くんが、私の隣に座った。