【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
嫌な沈黙が続き、ごくりと息を飲む。
これ以上の気まずさは……耐えられない。
「あの、話っていうのは……」
自ら沈黙を破るように、口を開いた。
「さ、先に、私から話してもいいですか?」
那月くんの話を聞くよりも先に、私も……。
「那月くんに……話たいことがあるんです」
この前拒んでしまったことへの謝罪と……私の、ことを。
今まで目を合わそうとしなかった那月くんが、感情の読めない瞳で私を見た。
「後藤とのことですか?」
「え?」
後藤くん?
どうして、ここで後藤くんの話が出てくるの?
「最近後藤と仲いいんですね」
ハッと、かすれた笑みをこぼした那月くん。
なんだか投げやりの態度や、優しさのこもっていない声色。
「俺よりあいつがよくなりましたか?」
何を、言っているんだろう。
私がそんなふうに思わせてしまった?
でも、心当たりがあるとしたら、さっき話しているのを見られたことと、後藤くんが話を合わせてくれたことくらい。
たったそれだけのことで、そんな言い方をされないといけないの、かな。
「もう俺、いりませんか?」
那月くんには……私の気持ちはなにひとつ、伝わっていなかったのかな。
そう思うと、虚しさで心が満たされた。
もう……話したくない。
「いらないのは、那月くんの方じゃないんですか?」
「……え?」
私の言葉に、那月くんが一瞬目を見開かせた。