【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「那月くん……」
えっと、何か、言わなきゃ。
そう思ったけれど、返事を考える間も無く那月くんは言葉を続ける。
「もう、俺のことは嫌になりましたか?付き合いきれないって思うくらい幻滅しましたか?」
ち、違う、そんなことは思ってない……。
「本当に、ガキみたいな態度をとって、すみませんでした……先輩が許してくれるならなんだってします。だから、別れるなんて言わないでください」
ま、待って那月くん、私そんなつもりは……。
「先輩がいなくなったら、俺——」
「ち、違います!別れ話をしようなんて思ってません!」
一旦、歯止めがかからなくなった那月くんを止めようと、大きな声を出した。
目を大きく見開いてぽかんとしているけれど、止まってくれた那月くんにほっと息を吐く。
びっくりした、那月くんがこんな風になるなんて。もしかしたら……那月くんも、たくさん悩んでいたのかもしれない。
もしかしたら……途轍もなく、すれ違ってしまっていたのかもしれない。
冷静になって……ちゃんと、話したい。
那月くんの気持ちも知りたいし、
私のことも、全部……伝えたい。