【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
episode*05『先輩の初めて、俺にください』
「ち、違います!別れ話をしようなんて思ってません!」
「本当ですか?でも、敬語……」
「こ、これは、那月くんが怒ってると、思っていたから」
つい、敬語になってしまっただけで……。
私の返事に、那月くんが眉を顰めた。
「そうですよね。そう思われても仕方ないですよね」
那月くんの表情からは、罪悪感を感じているように見て取れた。
責めたい訳ではなかったから、私の中にも同じ感情が生まれる。
「あ、あの、ゆっくり話そう?お互い、言葉足らずだと思う」
私たちに今必要なのは、お互いの言葉だと思った。
「……いえ、全部俺が……」
那月くんはぼそりと呟いて一度黙り込んだ後、再びゆっくりと口を開いた。
「俺から話してもいいですか?」
下手にでるようにお願いされ、断る理由もなく首を縦に振った。
那月くんの話、聞かせてほしい……。
「先輩のこと、疑ってるわけじゃないんですけど……」
私はじっと、話し始めた那月くんを見つめる。
「社長との関係が、ずっと気になっていました」
社長との関係?