【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
あ……噂のこと、かな。
愛人だとか、よくない噂がたくさんあるし、やっぱり那月くんの耳にも入っていたんだ。
「この前先輩の家にお邪魔した時、画面が見えてしまったんです」
え?
「前も電話した時、『百合香ちゃん』って誰かに呼ばれてましたよね?先輩は家族との食事って言ってたんで、信じようと思ったんですけど、どうしても気になって」
そうだったんだ……。
社長との繋がりがバレていたとは思わなかったから、驚いてしまった。
確かに、あんな噂があった上に、実際繋がりがあるって知ったら気になって当然だ。
那月くんに不安を抱かせてしまっていたこと、気づかなかった。
那月くんは、ゆっくりと話を続ける。
「俺が迫って拒まれた時、『先輩にとって俺はなんだろう』って思ってしまったんです」
「……」
「これ以上先輩に情けないところ見られたくなくて、冷静になりたくて、ひとりで沢山考えてました。でも、考えれば考えるほど考えが悪い方向にしかたどり着かなくて、先輩からの連絡にもどう返せばいいのかわからなくなっていって」
聞かされる真相に、胸が苦しくなった。
もし私がきちんと話していたら、こんなすれ違いはなかったはず。言葉足らずだったのは、私の方だ。