【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「別に、最初とか最後とか、先輩とならどうでもいいって思ってました。過去の男に負けないくらい好きになってもらうって決めていたので。でも……それだけ大切にしてくれていた初恋の相手に、俺を選んでくれたっていうことに……感動してます」
まっすぐに見つめられ、ごくりと喉が鳴った。
こんなふうに、受け入れてもらえるなんて思ってなかった。こんなことならもっと早くに……那月くんに言っておけばよかったんだ。
勝手に怯えて、決めつけて、幻滅されるくらいならと隠すことを選んだ過去の自分が恥ずかしい。那月くんが優しい人だって、わかっていたはずなのに。
「俺、無理に迫って……怖かったですよね。すみません」
私が拒んだ日のことを言っているのか、那月くんの言葉に首を左右に振った。
もう、謝らないで。
「ううん、今まで噂に対して、まともに否定しなかった私が悪いの。那月くんに勘違いされてるってわかってたのに、嫌われるのが怖くて言えなかった……」
これからは、もう嘘はつかないって約束する。
私は、那月くんのことをもっと信じたい。だって……ずっとこの人の隣にいたいから。
こんなどうしようもない私を、まるごと受け入れてくれる那月くんの、そばにいさせてほしい。
「先輩……?」
那月くんが、私を見て目を見開いていた。驚いたその表情を見て、自分の瞳からまた、涙が溢れていたことに気づいた。
顔を隠すように、服で涙を拭う。