【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
たくましい腕の中で、私もこの人が大好きだと改めて思った。
「振られるかと思ってた……」
「俺もです……でも、謝って、土下座してでも許してもらおうって思ってました」
那月くんが土下座なんて……!そんなことさせられないし、してほしいとも思わないけれど、それだけ私のことを想ってくれているのだと嬉しくなった。
私だって、那月くんに捨てられたら、泣いてすがってしまうだろう。
「今、凄く幸せ……」
「……可愛いこと言わないでください」
「はぁ……」と、困ったようなため息が髪にかかる。
心臓が、うるさいほど早く強く打っていた。
「あ、あの、もうバレてしまったから言うんだけど……こういうのも、凄くドキドキして……心臓がいつも、大変なことになってるから、挙動不審でも笑わないでね……」
今までは、必死に平静を装っていたけど、これからは隠さなくてもいいんだと思うと、少し気が軽くなった。恥ずかしいことには変わらないけれど。
「いつも真っ赤になってる理由がわかりました。……可愛い」
「も、もう、そればっかり……」
「そればっかりですよ、俺の頭の中」
優しく私を包み込んでくれていた腕に、力がこもる。
「先輩が可愛くて、仕方ないんです」
どうしよう、もう……心臓が壊れそう。
私だって、那月くんで頭がいっぱいだ。那月くんの前だと、何にも取り繕えなくなってしまう。