【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「今日は……泊まっていってくれませんか?」
え?
那月くんの言葉に、体温が上がった。こんな話の後だったから、嫌でも意識してしまう。
泊まるって、もしかして……。
「何もしませんから、安心してください」
続け様に言われたセリフに、ほっとすると同時に寂しさもあった。
「ただ、こうして……先輩を抱きしめながら、朝を迎えたいです」
那月くん……。
これでもかというほど優しい笑みを浮かべている那月くんに、いろんな感情が押し寄せて胸がきゅっとする。
私が、怖がってると思ってる?きっと、私のペースに合わせようとしてくれてるんだろう。
那月くんの気持ちは嬉しい。けど、
「あ、あの、那月くんとなら……いい、です」
私、とっくに覚悟はできてたの。ただ、あの日の那月くんは少し怖くて、今までも、初めてってことがバレるのが怖かっただけで……。
那月くんに触れられることに、恐怖はない。むしろ、私だって那月くんのことが好きで、もっと深いつながりが欲しい。
初めても、最後も、全部全部……那月くんがいい。
「え?」
那月くんが、目を大きく見開いて私を見ていた。驚きと戸惑いの表情に、失言したかもしれないと不安になる。
もしかして、はしたなかった……?