【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
那月くんはきっと、今までたくさんの女の子と付き合ってきたと思う。
だからこそ、必然的に比べられてしまうんじゃないかと思うし、全くの無知だからこそ、過去の女性に勝てる自信が少しもない。

つまらない女って……那月くんに幻滅されることが一番怖い。


「先輩は何もしなくていいです」


そんな私の不安をかき消すように、那月くんは優しく微笑んでくれた。

いつもの笑みに、私の心も少しだけ軽くなる。

この人になら……全部委ねたいと思った。


「最後に確認させてください。本当に……」


那月くんはそう言いかけて、なぜか口を閉ざした。


「……やっぱりやめます」


え?やめる……?
私が躊躇したからまた気を使わせてしまったのかなと不安になったけど、杞憂だった。


「俺に抱かれて、先輩」


ごくりと、息を飲む。


「先輩には、多少強引にいくって決めたんでした」


そういう意味だったんだ……。

それでも、強引にいくといいながら、私の返事を待ってくれている那月くん。


恥ずかしすぎて、こくりと頷くのが限界だった。


那月くんはそっと私を抱えて、どこかへ移動した。
連れてこられたのは寝室で、那月くんの腕から、広いベッドに沈む。

那月くんが、そっと髪にキスをしてくれた。
唇が、少しずつ下がっていく。

おでこ、頬、そして唇にも、とびきり甘いキスをされた。

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