【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
そのまま……那月くんが首筋にキスをした時、思わず身をよじってしまった。


「あの、待って……」

「怖いですか?」

「違うの、あの、やっぱり恥ずかしくて」

「恥じらってる姿も可愛いです」



追い討ちをかけるように那月くんがそんなことを言ってくるから、冗談を抜きにして沸騰してしまいそうなくらい顔が熱い。

那月くんが……甘すぎる。


「ごめんなさい、俺浮かれてますね。ほんと、今幸せすぎて頭がおかしくなってる」


確かに、いつもより声が浮き足立っているように感じる。

でも、どうして謝るのかわからないし、私にとって那月くんが喜んでくれることは、ただただ嬉しい。


「好きです……百合香さん」



えっ……。


「……なんて」


恥ずかしそうに、はにかんだ那月くん。
まるで言ったことを悔やむように照れていて「忘れてください……」と苦笑いしている。

ま、待って……。


「も、もう一回、呼んでほしい」

「え?」

「ほんとはずっと、名前で呼んで欲しかった……」


さっきは恥じらいが優っていて、ちゃんと味わえなかったから……もう一度、名前を呼んでほしい。


「……っ。可愛いこと言わないでください。優しくできなくなる」


那月くんはなぜか、じれたように眉をひそめた。

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