【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
早く言ってもらいたくて、視線で訴えると、また「可愛いな……」といつもより荒っぽい声で呟いた那月くん。


「愛してる……百合香さん」


思わず自分から、手を伸ばして那月くんに抱きついた。


「わ、わたしも……匡壱、くん」


恥ずかしさも吹き飛ぶくらい、嬉しくてはしゃいでしまった。


「……」

「……那月くん?」

「……すみません。今ので理性、飛びました」


呻くような声でそう言われて、思わずびくりと震えた。


「もう、待てはなしです」


返事をする間も無く、重なった唇。
言葉とは裏腹に、那月くんのキスはとても優しかった。

もう……全部委ねてしまおう。

優しいキスに絆されるように……私はその日、身も心も那月くんに預けた。


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