【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
いつも、朝は日の光で目が覚める。少し開けたカーテンから覗く日差しが、気持ち良い朝を迎えさせてくれる。
今日も、いつものように……。
「ん……」
光ではなく、視線を感じて目が覚めた。
目の前に広がった光景を見て、一気に目が冴える。
な、那月くん……!?
私の視界にドアップで映ったのは、じっとこっちを見つめている那月くんの顔だった。
「おはようございます」
「お、おはようございます……」
「すみません、先輩の寝顔が可愛くて、見入ってました」
私の、寝顔……!?
寝顔なんてみっともない姿を見られていたと思うと、恥ずかしくて目を伏せた。
可愛いはずがない……気を使われてしまった……。
げ、幻滅されてなかったらいいけど……。
というか、昨日眠るまでの記憶がない。
もしかしたら、どこかで寝落ちてしまったのかも……。
「わ、私のほうこそ……勝手に寝て、ごめんなさい……」
「俺もあの後すぐに寝たんで、平気ですよ」
那月くんの言葉に、安心した。途中で、眠ったわけではなさそう。
私は本当に昨日、那月くんと……。
「先輩、体は平気ですか?」
「う、うん」
いたわってくれる那月くんに、首を縦に振った。
腰が重く、少し痛みも感じるけど、平気。
この鈍い痛みが、昨日の記憶を蘇らせるようで、また頬が熱を持った。
「こんな幸せな朝は、初めてです」
愛おしげに、私を見つめてくれる那月くんの瞳に、朝から心臓が高鳴る。