【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
相当話し慣れている人で、雑談話や、私でも知らない社内の小話を聞かせてくれて、つい私も会話に夢中になっていた。

こういう人が、人気者って呼ばれるんだろうな。
きっと学生の時は、いつだって輪の中心にいた人に違いない。


テーマパークについて、私たちは中に入った。
入口やシンボルのオブジェなど、目に留まったものは逐一写真に納めた。

今日は視察で来ているんだから、アイデアを隈なくメモしていく。

桐生くんも同じようにスマホでメモを取っていて、その姿が少し意外だった。


「このエリア、先月リニューアルされたそうですよ。社長自ら企画に携わったそうなんで、ここは隈なく押さえておきたいです」

「そうだったんですね。誰かから聞いたんですか?」

「いえ、社長とテーマパークに関わる記事を読み漁ったんです。おかげでちょっと寝不足です」


困ったように笑った桐生さんの目の下に、うっすら隈ができていることに気づいた。

仕事に対して、とても真面目な人なのかもしれない……。
彼への印象が、少しだけ変わった。


「それにしても、フードメニューの外注って珍しいですね」

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