【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「お、おばけだけは、ダメなんです」
そう言って、恥ずかしそうに両手で顔を覆った百合花さん。
「なら、最初からそう言ってくれればよかったのに」
「ひ、人に弱みを見せるのは、もっと嫌なんです」
「へー」
なるほど……。
弱みを見せるのが嫌だったのか。
それなら、彼女の冷めた態度も納得だった。
でも……理解はできない。
「意外です。俺が百合花さんだったら……媚び売ってうまく生きていきますよ」
普段はそんなことは言わないのに、どうしてか本音が口をついていた。
多分、百合花さんが他人には見せない姿を見せてくれたから、俺もそうしたんだと思う。
こんなに綺麗な人なら、もっと上手い生き方があるはずだ。
……俺みたいに。
「……そう思われるのが嫌なんです」
俺の言葉に、百合花さんは不満そうに眉の両端を下げた。
「私は私の力で生きていきます」
俺からふいっと視線を逸らして、そう言った百合花さん。
その横顔が……すごく、美しく見えた。
「百合花さんは同類だと思ってました」
「え?」
「俺、この顔だからチヤホヤされて生きてきたんですよ」
何を語ってるんだろう、俺は。
普段なら、自分のことなんか話さないのに。