【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「女性だから仕事ができないと思われたくないんです。そういう性別の壁を作りたくなくて……」


ああ、だから舐められたくない、みたいな態度だったのか。


「でも、私のほうが敵対しして、壁を作っていたのかもしれません……」


百合花さんの眉が、ますます垂れ下がっていく。
悲しげな表情に、俺の方が困ってしまった。

いやいや、別にそれが悪いってわけじゃないし、そんな反省しなくても……。

俺がフォローするより先に、百合花さんがこっちを見た。

なぜか、ぺこりと頭を下げた百合花さん。


「気づかせてくれて、ありがとうございます」


いや、なんのお礼……。

この人、ほんっとおかしい……。
律儀かよと、突っ込みたくなった。

こんな人、今時いるのか。


「別に男嫌いってわけじゃないんですか?」


気になっていたことを聞いてみると、百合花さんはすぐに首を横に振った。


「そ、そんなことはありません。同僚の方はみんな尊敬していますし、頼りにしてます」


また想定外の返事がきて、笑いが堪えきれなかった。

不器用すぎる……。

ていうか、この人にそんなこと言われたら、みんな鼻の下伸ばして喜ぶだろうな。
教えてやらないけど。

この人のこういう部分は、できれば隠しておきたい。
その時、自分が独占欲を感じていることにやっと気づいた。

俺は、もしかして……この人が気になってるのか?

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