【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「……図星ですね」
俺の言葉に、百合花さんは恥ずかしそうに視線を逸らした。
「か、からかわないでください」
別に、からかっているつもりはない。
むしろ、そんな顔をされるのは腹が立つかも。
相手の男に、だけど。
「いいなぁ……羨ましいです」
百合花さんの恋人が。
話を出しただけで、こんな顔を赤くされるくらい愛されてるとか……。
営業企画部のエースか……。
確か名前は、那月さんとか言ってたな……同じ営業部だけど、まだ会ったことはない。俺も上司について走りまわっていたし、営業企画もいつも忙しなくしているから。
どんな人だろう。
……奪えるかな。
「恋人がほしいってことですか?」
首を傾げて俺を見ている百合花さんに、今日何度目かの笑みがこぼれる。
「違いますよ」
どうしてそんな発想になるんだろう。
この人相手には、下手な駆け引きじゃ通用しなさそうだ。
「百合花さんって、自分の容姿に疎い人ですか?」
俺の質問に、また首を傾げている百合花さん。
その仕草のせいか、百合花さんが幼く見えた。