【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
伝わってくる体温は正常に感じて、ひとまずほっとした。
どうしてか、桐生さんは私を見て驚いた顔をしていて、それにまた首をかしげる。
「スキンシップはいいんですね」
す、スキンシップ?
「い、今のはスキンシップではないと思います」
熱があるか確認するために、触れただけで……。もしかして、それでもスキンシップになるのかな?
だとしたら、勝手に触って桐生さんには申し訳ないことをしてしまった。
「先輩!」
不躾にごめんなさいと謝ろうとした時、那月くんの声がして反射的に振り返った。
会社から出て、駆け寄ってきてくれる那月くんの姿が視界に映って、私の目が輝いてしまう。
気づいて来てくれたのかな……。
「視察帰りですか?」
「はい」
「お疲れ様です」
那月くんの言葉と笑顔だけで、疲れなんて吹っ飛んだ。
ちらりと、視線を私から桐生さんに移した那月くん。
「営業部の桐生くんだよね。よろしく」
桐生くん……那月くんより年下なのかな?
そう言えば年齢を知らなかったし、今の時代歳を聞いていいものなのかも躊躇してしまうから。
「よろしくお願いします」