【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「企画、順調なんですね」
「原価計算の段階に入ったので、あとは開発部にって感じです」
百合花さんが、ほっとしたような、嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「お疲れ様です」
……この人、結構俺に心開いてくれてないか……?
そう錯覚しそうなくらい、気の抜けた笑顔に心臓を鷲掴まれる。……美人の笑顔は凶器だ。
「まだ企画的には始まったばっかりなんで、終わったら改めて飲みに行きましょうね」
「……」
あからさまに、困った顔をした百合花さん。
最初は何を考えてるかわからない人って思ってたけど、よく見るとすぐに感情が顔に出る人だ。
飲みに行くの、そんなに嫌なのか……。お酒は飲めないと言って今も烏龍茶を飲んでるけど。
「百合花さん、普段飲みに行かないんですか?」
「行きません……」
「どうして?飲めないから?」
理由がそれだけには思えない。
会社の飲み会にも百合花さんは来ないと聞いたし……何か理由があるのか?
百合花さんのことを知った今、ただ付き合いが悪い人とはどうしても思えない。
「それもですけど……私がいても、白けさせてしまうだけなので」
そう言って、悲しそうに視線を下げた百合花さん。
いやいや……気にしすぎ。
同僚たちも、百合花さんならいてくれるだけで喜ぶと思うけど。