【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
まだ相手がわからないから、様子を伺ってるって感じ。
それにしても、威嚇しすぎ。
「百合花さんの後輩です」
『百合花さん……?』
何が気になったのか、さらに声のトーンを下げた那月さん。
爽やかさなんてかけらもない、独占欲丸出しな声色だった。
「桐生って言います。覚えてませんか?」
『……お前、百合花さんに何した?』
相手が俺だとわかって、敬語すら外された。
電話越しでも、キレてるとすぐにわかった。
『どうして君が百合花さんの電話に出たんだ?』
平静を取り繕っているつもりなのかもしれないけど、全然隠せていなくて笑えてくる。
「百合花さん、酔っちゃったんですよ。このまま放置するわけにもいかないので、家に泊めますね。安心してください」
『今どこにいる?』
「居酒屋から出たところです。……すみません、タクシーつかまえるので切りますね」
俺はそう言って、一方的に電話を切った。