【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
……これで、ふたりの仲がこじれでもすればいい。
流石にこんなことで、別れ話にまでは発展しないだろうけど……百合花さんに弱みができればそれでいい。
恋人とうまくいっていない時が、一番奪いやすいから。
「……悪い男ですみません」
眠っている百合花さんの髪を、そっと撫でた。
家について、とりあえず百合花さんをベットに寝かせる。
俺はソファで寝るか。
シワがよりそうだったから、ジャケットだけ脱がせた。
家に百合花さんがいるとか、違和感しかない。
……寝顔、くそ可愛いな。
冗談を抜きにして天使かと思う。いつまで見ていたって飽きない。
風呂入って、俺も寝よ。
シャワーを済ませて、寝る前にメールのチェックだけする。
ベッドの上にいる百合花さんは、全く起きる気配なし。
気持ちよさそうに、すやすや眠っている。
百合花さん、明日起きたらどんな反応するだろ……。
そんなことを思った時、突然インターホンが鳴った。
ん……?
この音は、エントランスからじゃなくて家の前?
同僚か……?
同僚と家飲みをしたこともあるし、同じ社宅に住んでいる社員の可能性はある。
今来られるのは困るけど、玄関からは見えないから、靴だけ隠して応答しようと立ち上がる。