【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。


「はい……って」


……は?


インターホンの画面を見て、映っていた人物の姿に驚愕した。
ここにいるはずがない、那月さんの姿が映っていたから。

この人、今名古屋なはずだよな?
もしかして……あの電話で、わざわざ来たのか?

ていうか、なんで俺の家知ってるんだよ……。

さーっと、血の気が引く。

ストーカーかって……。
何、追跡アプリでも入れてんの?


「開けろ」


無視しようかと思っていた時、玄関から声がした。

このまま騒ぎになったら、俺が百合花さんを連れ込んだみたいになるし……まあ実際間違ってないけど、立場的に困る。

仕方なく、俺は玄関の扉を開けにいった。

重いドアを開けると、静かな怒りを宿した那月さんの姿が。

こっわ……。


「どうして俺の家がわかったんですか?」

「……社宅に住んでる奴に聞いた」


素直に答えてくれた那月さんに、納得する。

この会社プライバシーなしかよと思ったけど、那月さんは信頼されてそうだし、社員の口を割らせるのもたやすそうだ。

それに、追跡機能は使っていないみたいで安心した。さすがにそこまできたら狂気を感じる。


< 203 / 220 >

この作品をシェア

pagetop