【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「はい……って」
……は?
インターホンの画面を見て、映っていた人物の姿に驚愕した。
ここにいるはずがない、那月さんの姿が映っていたから。
この人、今名古屋なはずだよな?
もしかして……あの電話で、わざわざ来たのか?
ていうか、なんで俺の家知ってるんだよ……。
さーっと、血の気が引く。
ストーカーかって……。
何、追跡アプリでも入れてんの?
「開けろ」
無視しようかと思っていた時、玄関から声がした。
このまま騒ぎになったら、俺が百合花さんを連れ込んだみたいになるし……まあ実際間違ってないけど、立場的に困る。
仕方なく、俺は玄関の扉を開けにいった。
重いドアを開けると、静かな怒りを宿した那月さんの姿が。
こっわ……。
「どうして俺の家がわかったんですか?」
「……社宅に住んでる奴に聞いた」
素直に答えてくれた那月さんに、納得する。
この会社プライバシーなしかよと思ったけど、那月さんは信頼されてそうだし、社員の口を割らせるのもたやすそうだ。
それに、追跡機能は使っていないみたいで安心した。さすがにそこまできたら狂気を感じる。