【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「百合花さん、寂しがってましたよ」
「……」
「那月くんに会いたい〜って、泣き疲れて寝ちゃいました。寂しい思い、させないであげてくださいよ」
俺の言葉に、那月さんは少しの間何も言わず、結局返答しないまま家を出て行った。
あーあ……。
ていうか、煽ったつもりだったけど、逆効果だったかも。
「はぁ……」
でっかいため息を吐いた後、もう寝ようとベッドに横になった。
あの人さえいなければ、朝まで百合花さんといれたのに……。
けど、もうなんか……勝てる気がしなくなった。
諦めたくないけど、流石にあれと戦える気はしない。
初めて本気になれたのに……。
百合花さんも那月さんにぞっこんだし、どうやったってなびいてくれなさそう。
むしろ、強引に迫ったら嫌われそうだし……当分は、頼れる後輩ポジでいいかな。
もうちょっと早く出会いたかった……と、運命を恨んだ。