【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
episode*05『ずっと一緒にいてください』
『百合花さん』
那月、くん……?
そっと、手を伸ばす。
すると、大きな手が私の手を握ってくれた。
でも……あれ?
『俺ですよ。桐生です』
目の前にあるのは、桐生さんの顔だった。
『桐生さん……?』
『那月さんはもういません』
そう言って、私に顔を寄せてくる桐生さん。
『だから、俺といましょう』
ま、待って……これは、どういう状況なの?
ゆっくりと近づいてくる、桐生さんの顔。
このままだと、唇が触れそうな距離だった。
い、いや……。
「那月くん……!!」
驚くくらい、大きな声が出た。
自分自身の声で目が覚めて、眠っていたのだと気づく。
今の……夢?
びっくりした……。
「はい、那月です」
ほっとしたのもつかの間、後ろ聞こえた声にまた驚く。
この声は……那月くん?
よく見ると、自分がベッドに横になっていることに気づいた。
それも、自分のベッドではなく……那月くんの家の。振り返ると、そこには那月くんの姿が。
「えっ……!?」
ど、どういう、こと……?