【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「こ、これ、夢……?」
夢から覚めたと思ったのに……また違う夢を見てるのかな……?
だって……那月くんが、いるわけないし……。
「夢じゃないですよ」
再び声がして、勢いよく振り返った。
その先に……私の隣で横になっている那月くんの姿があった。
え?
言葉通り、目が点になる。
「ど、どうして……」
いるはずのない那月くんが、ここにうるの?
それに……私はどうして、那月くんの家のベッドで寝てたのっ……?
驚いている私を見て、微笑んだ那月くん。
「新幹線で急遽戻ってきました」
そ、そうだったんだ……。
那月くんがいる理由はわかったけど、ここに私がいる理由がまだわからない。
「百合花さん、俺に連絡くれたでしょ?桐生と食事に行くって」
あ、そうだ……私、桐生さんと食事に行ってたんだ。
仕事の話をして、その後那月くんとのことで相談をして……それからの記憶が、何もない。
それが恐ろしくて、さーっと血の気が引いた。