【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
まだ目が覚めたばかりで、私も完全に状況が飲み込めていない。
ただ、私に非があるということは理解したつもりだけど……なぜか那月くんは、自分が悪いみたいに話すから、困惑してしまう。
返事に困っている私を抱きしめたまま、那月くんは言葉を続けた。
「百合花さんを信じていないわけじゃなくて、桐生が信用ならなかったんです。俺はいつも……あなたの周りにいる男全員に嫉妬してます」
唐突な告白にも、驚きを隠せなかった。
そ、そんなに……?
那月くんはよく、自分は独占欲が強いと言ってはいたけど……そこまで嫉妬させていると思わなかった。
今回も、わざわざ来てくれるなんてよほど心配をかけたに違いない。
桐生さんも、那月くんに何か言ったのかな……?
「おかしいって自分でもわかってるんですけど、百合花さんを独占したい気持ちが抑えられなくて……」
そんな情熱的なことを言われて、かあっと顔が熱くなった。
そ、っか……。
「俺のこと、怖くないですか?」
「え?ど、どうして?」
さっきから、那月くんが何を不安がっているのかわからない。
「男と飲みに行っただけで、新幹線に乗って帰ってくる男ですよ」
顔をしかめながら、そう言ってくる那月くん。