【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「……何があっても、これからも俺が守ります」


何があったか気になったけど、そんなふうに言われたら、何も言えなくなってしまう。


「それで……聞きたいことがあるんですけど」

「聞きたいこと?」

「桐生に、俺がいなくてさみしいって言ったのは本当ですか?」

「えっ……!?」


う、嘘……私、桐生さんにそんなこと言ったの……?


「き、記憶がないです」


恥ずかしすぎて、那月くんの方を見れない。


「ふふっ、敬語になってます」


那月くんはからかうように笑った後、私の顔を覗き込んでくる。


「俺がいなくて、寂しかったですか?」


いたずらっこのような瞳と目があって、下唇を噛み締めた。
ずるい……。

ふつふつと、那月くんがそばにいる幸せが湧いてきた。

さっきまでは混乱していて、飲み込めていなかったけど……。

二週間ぶりの、那月くんだ。


何も答えず、代わりに自分から那月くんに抱きついた。


「百合花さん?」

「寂しかったです……」


困らせるようなことは言いたくない、けど……。


「一ヶ月那月くんに会えないなんて、耐えられない……」


本当に、限界だった……。
会いたくて会いたくて、たまらなかった。

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