【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
那月くんがいる事実が嬉しすぎて、恥ずかしさなんて吹き飛んだ。

こんな正直なわがままを伝えたのは、初めてかもしれない。


「……俺もです」


呆れられたらどうしようと不安に思ったけれど、しんな心配は一瞬にして吹き飛ぶ。

那月くんが、これでもかというほど嬉しそうに微笑んでいたから。


「会いたくて……毎日帰ろうかって本気で思ってました」


本当に……?

独りよがりが一番悲しいから、那月くんも同じ気持ちでいてくれたことに感動した。

言ってよかった……。


「百合花さんも同じだったなんて、嬉しすぎて舞い上がりそうです」


私と同じことを思っている那月くんに、今度は私が笑ってしまう。


「はぁ……可愛い」


那月くんは私の首筋に、ぐりぐりと顔を押し付けてくる。


「百合花さんだけが俺の癒しです」


い、癒し……に、なれているなら嬉しい……。


「もうずっとそばにいたいです」


こんな私を可愛がってくれるのも、癒しだと言ってくれるのも、きっと那月くんくらいだ。
こんなにも素敵な人が、たくさんの愛情を注いでくれていることを改めて実感して、無性に泣きそうになった。


「いつ戻りますか……?」


まだ出張期間は残っているから、那月くんはすぐに戻ってしまう。


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