【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
苦渋の決断の末に提案すると、即答された。
「いいんですか?百合花さんいつも嫌がるのに」
確かに、今までは恥ずかしいから断ってた。
お風呂場では、隠すこともできないし……。
だけど……。
「私も、一秒も離れたくなくて……」
一秒でも長く一緒にいたいのは、私も同じ。
「俺のこと、これ以上煽らないでください」
「きゃっ……」
抱きかかえられ、驚いて声がでる。
私を抱えたまま、急ぎ足で浴室に向かっていく那月くん。
余裕のない那月くんがますます可愛くて、愛おしさが溢れた。
あれ……。
目が覚めると、一番に視界に映ったのは那月くんの寝顔だった。
そうだ……昨日……。
今何時だろう。那月くん、6時には家を出るって言ってたから……時間になったら起こさないと。
そう思ったけど、まだ4時を過ぎた頃だった。
こうして那月くんの腕の中で眠るのも久しぶりで、幸せに包まれている気分。
那月くんの寝顔を見ているだけで、口元が緩んでしまう。
幸せに浸っていたけれど、枕元にあるスマホが震えたことに気づいて手を伸ばした。
桐生さんからメッセージが届いていて、内容を確認する。
【今日はすみませんでした】