【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
那月くんは私の言葉に一瞬目を見開いた後……嬉しそうに微笑んだ。


「ねえ百合花さん」

「はい?」

「大事な話があります」


大事な話?

唐突に話を切り出されて、緊張感が走った。

那月くんが改まったように体を起こして座ったから、私も起き上がる。


「この前、出張から帰ってきたら話すって言いましたよね」


もちろん、それは覚えてる。


「まだ終わってないですけど……」


い、今から話すの?

さすがに、別れ話なんて思ってはいないけど……私にとって嫌な話だったらどうしよう。

会うのは控えましょうとか、転勤が決まったとか……。


「一緒に、暮らしませんか……?」


悪い方向にばかり思考が偏っていたから、その提案に驚きを隠せなかった。


「え……」


一緒に……?

それって……。


「俺のこのマンションか、別の家を探すか……住む場所はどこでもいいんです。ただ、百合花さんと暮らしたいです」


真剣な表情で、私をまっすぐ見つめてくる那月くん。

本気で言ってるんだと、すぐにわかった。


「仕事終わりに会ったり、休日にデートするだけじゃもう足りないんです」

「……」

「百合花さんが嫌じゃなければ……俺は同棲をしたいって考えてます」


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