【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
そんなふうに考えてくれていたとは全く思っていなくて、まだ理解が追いつかない。

同棲……。

那月くんと、一緒に暮らすってことは……約束をしなくても、そばにいられるってことで……。

それは……想像するだけで涙が出そうなくらい、幸せなことだと思った。


「は、はい」


私はまだまだ至らないところばかりで、那月くんにふさわしい女性にはなれていないけど……そばにいることを許してくれるなら、これからも精一杯頑張る。

だから……隣にいさせてほしい。


「え……本当ですか?」


断られるとでも思っていたのか、那月くんは驚いて大きく目を見開いている。

まだ先のことだと思って考えてもいなかったけど、那月くんからの提案を断る選択肢なんて私にはなかった。


「よかった……はぁ……緊張しました」


ほっと胸をなで下ろしている姿に、笑顔が溢れた。


那月くんと、同棲……。

夢みたい……。

心の中が、喜びで埋め尽くされる。


「あの、ちなみに俺は、百合花さんと結婚を前提にお付き合いしてると思っています」


け、結婚……。

那月くんからその言葉が出るなんて思わなくて、さっき以上に驚愕してしまった。


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