【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
絶対に子供っぽいって思われたに違いない、恥ずかしい……。
出だしからペースを乱されてしまい、大丈夫かなと不安になりながらも、那月君がなんだか楽しそうなので、まあいいかという気持ちいなった。
「先輩、何か食べます?」
「いえ、食べ物は大丈夫です」
「そうですか。じゃあ飲み物だけ買いましょう」
こくりと頷き、ドリンクの商品一覧に目をやる。
カフェオレ……は無いのかな。それじゃあ、ホットココアにしよう。そう思った時、私の頭が停止指令を出した。
ココアって、子供っぽく無い?
でも、コーヒーは飲めないし、カフェオレは好きだけど、苦いのは苦手。
「先輩、ココアでいいですか?」
ぐるぐると頭の中で迷っていると、那月君は平然とした顔で聞いてきた。
……え?
反射的に頷くと、「じゃあ頼みますね」という返事が返ってくる。
どうして、わかったんだろう?
「あの、お金……」
「いいですこのくらい。デートなんですから、先輩は財布なんて出さないでください」
「でも……」
「彼女にお金出させるなんてこと、俺にさせないでください。ね?」
申し訳ない気持ちになりながらも、ここは素直に甘えた方がいい気がして、首を縦に振った。
那月君は、やっぱり紳士だ。
サッとお会計を済ませて、当たり前みたいにドリンクを持ってくれる那月君。