【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
そしてアクションミステリーということもあり、アクションシーンも迫力があって、洋画ならではの表現に驚いた。
うーん、私的にはこの男の人が犯人そう……。
すっかりと夢中で鑑賞していた時、急に画面に映し出されたグロテスクな場面。
思わず目を反らしたくなるシーンに続き、急に恐怖心を煽るようなBGMが流れ出した。
わ、わわっ……ま、待って待って……!
私、怖いのはほんとうに、ダメっ……。
主人公が、廊下に響く何者かの足音から必死に逃げるシーン。きっとこの足音の正体が犯人なのだろうか?わからないけど、とにかく怖い。
思わず目をキツくつむって、耳を押さえたいのを必死に我慢した。
は、早く終わって……!
そう願った時、私の手が、温かいものに包まれる。
突然のことに一瞬驚いたけれど、その温かいものの正体が那月君の手だとわかり、恐怖はすぐに別の感情へと変わった。
那月、くん……?
ドキドキドキ、と、心臓がうるさい。
鼓動は高鳴り収まる気配も見せず、むしろ速さを増すばかり。
「大丈夫ですよ。怖くないですから」
小さな声で、そう囁かれた。
暗くてよく見えないけれど、私を見ながら微笑んでいる那月君。
さっき、ホラーが苦手だってバレだから……怖がっているのを察して、手を握ってくれたのかな。
どうしよう……心臓が、うるさい。
ドキドキし過ぎて、映画どころではなかった。騒がしいBGMに、今だけは感謝したい。
そして、どうかもう少し、この室内を騒がしくしていて。
私の鼓動が、那月君にバレないように——。