【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「あっ、驚かせてすみません……!」
「いえ、どうかしましたか?」
「あの、この前はお弁当ありがとうございました!凄く美味かったです!これ、お弁当箱お返しします」
「あ。ありがとうございます。そう言っていただいて嬉しいです」
そういえば、後藤くんにお弁当を渡したんだった。綺麗に現れたランチボックスを受け取って、自分のデスクの上に置く。
「花京院さん、もうお昼ですよ?」
え?
もうそんな時間?集中していたから気づかなかった。
パソコン画面の右上を見れば、すでに十二時になってから三十分が経過していた。けれど、到底ご飯を食べる気にもならない。
「花京院さんも、休憩とってくださいね」
「はい。ありがとうございます」
「……あの……」
先ほどまでの笑顔を崩し、途端に表情を曇らせた後藤君。
「どうかしましたか?」と聞けば、言いにくそうにしながらも、口を開いた。
「那月と……別れたって本当ですか?」
——え?
どうして、後藤君がそんなことを聞くの?