【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。



「顔、見られたくなかったら、俺の背中に隠れて歩いてください」

「そうじゃなくて、手が……」

「ああ、だって離したら先輩逃げるでしょう?大丈夫です。今昼休みなんで」


何が大丈夫なのか、わからない……!

全く大丈夫ではないと、この状況に頭が追いつかない。

けれど抵抗しても離してくれる雰囲気ではなく、私は那月君に流されるまま大人しくついて行ってしまった。

気が済んだら……きっと離してくれるだろう。







「……先輩」


連れられて来たのは、使用中ではない会議室。

入るや否や、那月君は中から鍵をして、私を強く抱きしめてきた。

途端、頭の中が真っ白になる。


私、今……那月君に抱きしめられてる?

ど、どうして?

抵抗するという考えが浮かばないほど、パニックに陥っていた。


「今度は、拒まないでください……」


突然上を向かされたと思ったら、唇に柔らかい感触がした。

またしても何が起きているかわからない私は、ファーストキスの味を確認することも出来なかった。



すぐに離れた唇。

目の前にある、"男の人"の顔。



「どう、して……」

「すみません。我慢、出来なくて」


< 47 / 220 >

この作品をシェア

pagetop