【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「思い切って告白して、絶対断られると思ってたのに、オッケーしてもらえて……本当に引かれるくらい喜んでました。けど、先輩の様子見てたら、もしかすると無理に付き合ってくれてるのかもと思って……」
一瞬、悲しそうな表情をした後、那月君は強く強く私を抱きしめてきた。
伝わってくる体温が、驚くほど熱い。
「今でも信じられない。先輩が俺のことを好きだなんて……夢みたいです」
その声は、喉の奥から振り絞って出てきたかのように震えていた。
まるで全身で好きだと伝えられているようで、溢れた涙が頰を伝う。
「わ、私……」
那月くんばかりに、言わせてはいけない。
こんなふうに、真っ直ぐに想ってくれる彼に……中途半端な気持ちを見せたくはなかった。
中途半端な気持ちだと、思われたくなかった。
「ごめんなさい……私も、私なんかにも笑って接してくれる那月君が、ずっと好きでした。那月君から告白された時、本当は泣きそうなほど、嬉しかったっ……」
「……先輩」
「でも、こんな弱い部分を知られてしまったら、嫌われると思って……怖くて、那月君の前では、いつも素直になれなくて……」
那月君の服を、シワにならないように軽く握る。