【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。



こんなにも素敵な人が、こんなにも私のことを想ってくれている。


今まで……私には、恋愛は出来ないんじゃないかと諦めていた。

きっとこんな私、誰も好きになってくれない。

誰にも好きになってもらえず、いつまで経ってもひとりきりなんだろうなって。


「ね、こっち向いてください」


少し強引に、顔を那月君の方へ向くように持ち上げられる。

その際に、会議室の時計がふと目に入った。


「那月くんっ、そろそろお昼休みが終わります……!」

「……さっきから思ってたんですけど、素の先輩やばいです」


わ、私の話、聞いてる?

そう言おうと思ったのに、呆気なく唇を塞がれた。

サードキスは、少しだけしょっぱい涙の味がした。

唇が離れたと思ったら、那月君はいたずらっ子のような笑みを浮かべて、至近距離で見つめてくる。


「これからは、俺の前ではありのままの先輩でいてくださいね?約束です」


甘い声で囁かれた台詞に、首をゆっくりと縦に振った。


「それと、俺以外の前では、そんな可愛くなったらダメですよ?」


か、可愛くって?

今度は横に首を倒すと、クスッと笑われてしまう。

那月君は、ゆっくりと唇を私の耳に近づけて、息を吹きかけるように囁いた。



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