【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「俺結構……独占欲強いみたいです」
くすぐったくて、ビクッと身体が反応してしまう。
独占欲って……。流石に意味はわかるけど、那月君の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。
結構、あっさりしている方だと思っていたから。
もしかして、那月君もまださらけ出していない部分があるのかな?私に見せてない一面が、あるのかもしれない。
そうだとしたら……全部全部、見せて欲しい。那月君のこと、私ももっと知りたい。
首に手を回して、私から抱きついてみた。自分でも考えられないような大胆な行動だと思ったし、どうしてそんなことをしたのかはわからない。
でも、目の前の人が、愛しくてたまらなくって、抱きつかずにはいられなかったんだと思う。
驚いたのか、今度は那月君の身体がビクッと震えたのがわかった。
少しの沈黙が流れた後、那月君の方から焦ったように抱きしめてきて……
お昼休みの会議室、今までの心の隙間を埋めるように、私たちはきつく強く抱きしめ合った。
少し苦しいくらいが、ちょうどいい。
耳に、那月君の「はぁっ……」と余裕のないような息がかかった。