【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「ありがとうございます。それじゃあ仕事が終わったら、迎えに行きますね」
笑顔で頷くと、那月君はなぜか突然表情を一変させた。
ジリジリと近づいてくる綺麗な顔に、思わず後ずさる。
な、那月くん?真剣な顔して、どうしたの?
「最後にもう一回だけ」
もしかして、彼は確信犯?
甘えるような言い方は、私を絆すための罠に違い無い。
「も、もうっ……!」
「顔、真っ赤ですよ。あーもう、可愛い……大好きです」
私を翻弄してやまない那月君に、されるがまま。
でも、幸せだからいいやと受け入れることにした。
この人を誰よりも、大切にしていきたいと思った。
那月くんにも……ありのままの私を、まるごと愛してほしいと強く願った。
「やっぱり、離れたくないです」
「仕事終わったら、待ってます」
「……先輩、今日は絶対に残業引き受けないでくださいね。約束してください」
「ふふっ、わかりました」
どちらからともなくくすりと微笑みあった、幸せなお昼休みのひととき。
《 1st 》彼とわたし。-END-