【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
少し困ったように笑う那月君の表情に、罪悪感を感じた。
「眠たかったら寝ていてくださいね」
気遣いの言葉に、卑怯だと思いながらも頷いた。那月君がリビングから出て行って、再びひとりきりになる。
はぁ……私、何してるんだろう……。せめて、未経験ですって言えたら……ううん、それは何が何でもダメっ。
那月君に面倒くさいって思われたら、私……。
考えるだけで目に涙が滲んで、ソファの上においてあったクッションを抱きしめた。
せっかく那月君と、こうしてまた付き合うことができたのに。度胸のない自分はなんて情けないんだろう。
那月君に、愛想を尽かされないように努力しなきゃ。
そう決意したばかりなのに、昨日寝ていなかった疲れが溜まっていたのだろうか。私はクッションを抱きしめながら、いつの間にか深い眠りへと落ちてしまった。
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ん、眩しい……。
ゆっくりと、重たい瞼を開く。真っ先に視界に映ったのは、朝日にも劣らない眩しい笑顔。
一瞬、自分の今の状況を理解出来なかった。
「おはようございます」
爽やかな笑顔を浮かべて、私を見つめる那月君。