【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
えっと、昨日は那月君の家に泊まりに来て、ソファで那月君を待っていて、それで……。
「先輩、昨日ソファでそのまま寝てたんです。勝手にベッドまで運ばせてもらいました」
那月君の言葉に、自分の額を手で押さえた。
何てことを……いろいろとやってしまった……。
「ご、ごめんね」
「どうして謝るんですか」
ふっと、優しい笑みを零して、那月君は布団の中で身を捩った。
私の頰に自分の手を添えて、じっと見つめてくる。
「ね、ぎゅってさせてください」
「……っ」
首を縦に振ってみせると、嬉しそうに微笑んで、抱きしめてくる那月君。
朝からとても幸せな気分になって、泣くような場面でもないのにじんときた。
なんだか、幸せすぎて涙が出そうだ。那月君の胸の中、あったかい。
「先輩、今日は予定とかありますか?」
丁度、那月君がそう聞いてきたのと同時。私のケータイが音を鳴らした。
「ごめんなさい……私のスマホです」
「とりますよ」
電話だろうか、どこにケータイがあるかわからなくてあわあわしていると、那月君がベッドから出て取りに行ってくれた。
あ……鞄、そんなところに。