【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
episode*02『嫌なら、本気で拒んで』
「それじゃあまた」
「うん。送ってくれて、ありがとう」
「いえ。また連絡します」
那月君の乗った車が、住宅街に消えていく。
寂しいなぁ……。
次、二人でゆっくりできるのは何時になるだろう。
階段を上がって、2階の自宅へと歩く。鍵穴に鍵を差し込んで玄関の扉を開けようとしたら、何故か鍵が掛かっていた。
……誰かいる?
もう一度鍵を開けて、家へと入った。
私の家に無断で入れるのは、合鍵を持っているお母さんと……そして、もうひとりだけ。
「百合香ったら、朝帰り?」
「お、お姉ちゃん、いつから来てたの!」
リビングのソファで寛いでいる、お姉ちゃんの姿。テーブルの上には、食べ散らかしたお菓子の袋が散在していて、頭が痛くなった。
これだけ食べておいてまだお腹が空いているのか、スナック菓子の袋を開けながら、私を見るお姉ちゃん。
「左吾郎さんから連絡なかった?ご飯行くって」
「あ、あったけど……」
「それで、あたしが直々に迎えに来てあげたのよ〜。それなのに百合香ちゃんったら、朝帰りだなんて、大人になったわねぇ〜」
「あ、朝帰りって……」
これは、朝帰りになるのかな?
そう考えると、改めて恥ずかしさが溢れてくる。