【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
い、妹になんてこと聞くの……。
目をこれでもかと見開いて、信じられないとでも言うかのような顔。
「はぁ?あんたいくつよ。もう二十八でしょ?なにプラトニックラブしてんのよ」
「だ、だって……」
「まさかまだ処女とか言うんじゃないでしょうね……」
う……。
図星を突かれて黙り込んだ私に、お姉ちゃんは大袈裟すぎる溜息を吐いた。
「……ありえない。ちょっと待って、その彼氏と付き合って何日目?」
「一ヶ月と、少し……」
「一ヶ月!?そんなに付き合ってまだしてないの!?バカじゃない!?」
「そ、それっておかしい?」
「おかしいって……高校生じゃないんだから……ていうか今時高校生でもしてるでしょ。どんな彼氏よ一体」
そ、そういうもの……?
女友達も少ない私は、そういうことに疎かったけれど……まさか、自分がそこまで世間一般の価値観とズレていたとは。
恋多きお姉ちゃんが言う言葉には、謎の説得力があった。
私とは違い、中学生の頃から彼氏を取っ替え引っ替えしていたお姉ちゃん。いろんな男を誑かし、弄び、お姉ちゃんに泣かされた男性は数知れず……。
「長いことおあずけ喰らわせてたら、向こうも爆発するわよ」
そんなお姉ちゃんのアドバイスに、私は首を傾げた。