【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。


「先輩、隣座らないんですか?」

「う、うん、座る」


なんだか、変な感じだ。自分の家に那月君がいるという緊張からか、沈黙が続いた。

何か話す話題……そういえば、明日出張だって電話で言っていた。


「あ、明日、休日なのに出張なの?大変だね」


なんとか出てきた繋ぎの言葉はそんなもので、少しわざとらしかったかもしれないと後悔。

けれど那月君はいつもの笑顔を浮かべながら、きちんと返事をしてくれた。


「営業企画部に移ってから、月の半分は駆り出されてます」


安定した休みがとれないのかな?体調とか、心配だな。

「そうなんだ」と呟いた声は、再び流れた静寂に溶ける。



「ちなみに、来週は休みなんですけど……先輩空いてますか?」


来週?

基本的に、休日の予定なんてないから、もちろん空いているけど……。



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