【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
なにかあるのかと思い首を傾げれば、那月君が、コーヒーを一口飲んでから、少し恥ずかしそうに提案してきた。
「もし、よかったらなんですけど……実はこの前のデート、あんな形で終わったじゃないですか。もう一回、仕切り直しさせてほしくて」
カップを置いてわたしをみる那月君に、思わず「え?」と声が漏れる。
デートの仕切り直しって、そんなことを考えてくれていたの?
台無しにしてしまったのは、わたしの方なのに。
でも……那月くんの気持ちが、嬉しい。
「もう一回、デートしてくれますか?」
「はい」
また、デートできるんだ。嬉しくって、即答で返事をした。
また、楽しみが増えた。
那月くんほっと安堵の息を吐いて安心したように口元を緩めた。
「ありがとうございます。それじゃあ、日曜日は先輩のこと、独り占めさせてくださいね」
那月君になら、いくらだって、独り占めされたい。
そんな漫画の読みすぎのような思考に陥って、我に返って恥ずかしくなった。
気を紛らわせようとソファの背にたれようとした時、那月君と肩が触れる。