【完】悪名高い高嶺の花の素顔は、一途で、恋愛初心者で。
「待って、那月君……!」
思わず、唇を離して那月君の胸を押した。と言っても、腕力で勝てるわけもなく、少し距離が出来た程度。
待って待って……!流石にまだ、心の準備が……!
「嫌なら、本気で拒んでください」
那月君、本気、だ……。
理性のない瞳に見つめられ、ごくりと息を飲む。自分の額に、流れた冷や汗が伝ったのがわかる。
ほんとうに、今はまだっ……今日は下着も可愛くなければ、汗もかいてしまって、那月くんの幻滅されかねない……!
「ま、待って……!お願い……!」
今度は、本気で那月君の身体を押した。
視界に映ったのは、驚いた様子で目を見開く那月君の姿。
私は、自分がまたしても同じ過ちを犯してしまったことに気づいて、はっと我に返った。
どうしよう……また、誤解させたかもしれない。
「あ、あの、これはっ……」
「……すみません、俺……」
「ち、違うの……あの——」
「明日早いんで、そろそろ帰りますね」
やって、しまった……。
ソファから立ち上がった那月君を引き止めようと、腕を掴む。