イジワル副社長と秘密のロマンス
「だったらさ……」
潜め声で続く言葉は、私の彼氏としての言葉だと気が付けば、頬が熱くなっていく。鼓動が高鳴ってしまう。
息を詰めてその先の言葉を待っていると、突然、秘書室のドアが勢いよく開かれた。
私はそれを避けきれず、思い切り顔をぶつけてしまった。
顔を両手で抑え苦悶の声を上げていると、星森さんの声が聞こえてきた。
「えっ!? うそっ! 三枝さん!?」
指の隙間からちらりと見れば、青ざめた顔で私を見つめる星森さんの顔が見えた。
彼女は副社長室の前に樹君がいることにも気づいたらしい。私と樹君に対し交互に、強張った笑みを向ける。
「ごめんね、三枝さん。ドアの向こうに誰かいるなんて思ってなくて……大丈夫?」
「だっ、大丈夫。平気」
ちらちらと星森さんに視線を向けられていることに、樹君も気付いたらしい。
彼は肩を竦めると、副社長室のドアを開け、何も言わないまま室内に入っていく。
額の痛む左側を撫でつつ、そして話の途中だったのになぁという残念な思いも引きずりながら、私も秘書室へと移動する。
「ごめんね、三枝さん」
廊下の様子を気にしてから、星森さんが秘書室内へと戻ってきた。